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「……帰るか」
当て所の無い苛立ちを持ってしまった自分に恥と呆れを感じながら、背後に手をついた。
直後、聞き覚えの有る声が耳朶を叩いた。
「おいおい光野ァ。オメー新学期初っ端から行事サボってんなよ。なァ?」
「関係ないね(・・・・・)」
「おやおや、やはり我らが友人は根性が捻くれて居るらしい。それでこそ友人というものだが」
「初っ端から頭の中が壊れてるな」
振り返れば、その声の通り、見知った悪友の顔が並んでいる。
一人は背が高く、茶に染めた髪を長く伸ばした端正な顔つきだ。恨めしい。
名前を空木(ウツギ)総一(ソウイチ)と言い、校内屈指のバカであり、自分の悪友の一人でもある。
「ふむ。僕としては至極真っ当な頭脳のつもりだがね。少々無遠慮ではないかな」
「お前との中に遠慮も糞もあるか」
苦笑して言い放てば呆れたとばかりの演技を振り翳すのは小柄な美少年。正しく美少年という表現が正しい。
全体的に色素の薄い容貌。儚げな少年顔とあって、非常に年上のお姉さんからの好意を受けるヤロウである。妬ましい。
此奴は卯月涼。悪友の一人でもあり、頭脳明晰な性悪野郎だ。
「笑う事も在るまい。失礼な」
「失礼といわれてもな」
何とも微妙な表情を返す他無い。
ともあれ、
「お前ら何してんだ?」
「いや、オメーが居ねェから探しに来てやったんじゃねーか。それをオメー、何しに来たとか酷いだろ?んン?」
それを見た上で一つ嘆息。
「どっちにしろ、そりゃ口実だろうが。サボる気満々だろ?」
「おいおい? 俺等じゃァ不満かよォ?」
肩を竦めれば苦笑が漏れる。
「今更だろうが」
一言を言えば、そらそうだ、と相槌が打たれ、そのまま両隣に人が座る音。
それから他愛も無い話が続いて、やはり話が終わるまで屋上に居座ることになった。
それなりに陽が射して、それなりに風が吹いて、それなりに見晴らしの良い場所は、いつも自分たちの溜まり場となっている。
そう、いつも、だ。
余り代わり映えのしない毎日に、それなりに満足しつつも、退屈を感じてる。
それを変えて欲しいと思うのは、やはり自分もまだ若い証左なのだろう。
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