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「――ただいまっ!」
「遅いッ!」
玄関を開いたと同時に見えたのは突き出されたお玉の底。次いで打って返されたようにツッコミの言葉が入る。
多少は急いで帰った兄の苦労も察してほしいと思うのだが、往々にして身近な女性には男は頭が上がらないものだ。
エプロンという主婦の戦闘衣服に身を包んだのはやや小柄な少女で、目鼻立ちのくっきりとした美人さんである。無論、我が妹の加奈である。
学業優秀運動得意そいでもって美人という非の付け所がない少女なのだが、俺の遺伝子と共通部分ありますよね。
「お兄ィ早よ袋渡して! 醤油がないと料理が進まないの!」
「あいあい。ちょい待ちな」
突き出された手はお望みの調味料を渡せと催促をするように曲げられているため、どこにあったかを回想しつつ、手に提げた少々重めのビニール袋に手を突っ込む。
我が妹は和食が好物で、中でも本日の夕飯のメニューである肉じゃがは嗜好の一品(誤字にあらず)であるらしく、本人の拘りによってかなりの質と量を誇る。
そう言えば醤油は初めらへんに買ったか? いや、後で買ったっけなぁなどと思いつつまさぐっていく。
が、
「……あれ?」
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