第一章

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 訳の判らない感覚。  空気が凍りついた様に冷たい。ギシギシと軋んでいる音がする。  背筋を這い上がる何かが、勝手に体を前へと押し出した。  サドルに手を着きながら、半ば前転するように向こう側へと飛び出す。  膝を自転車に当ててしまうが気にならない。気にする時間がない。  道路の中央部ほどに飛び出せた直後、頭上を何かが通り過ぎた音がする。  ほぼ同時に、自分のやや上にある街灯が潰れる音がして、金属の塊が地面に落ちてくる。  慌てて後退り、目の前に落ちてきたのは自転車だった。 「……ッ!?」  叫び声が出ると思ったが、意外にも喉から出たのは掠れた吐息だけだ。  震える手で後ろへと移動しようとしても力が入らない。  ……ダメだ、ココにいちゃ、危な―― 「……赤坂、くん?」
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