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「俺とあんた、初対面だよな」
「そうだね。初めてだよ」
微笑みを崩すことなく、青年はきっぱりと言い切った。
初対面だというのに、なぜ自分以外はいらないと言うのかアキラはまったく理解ができない。
それが顔に出たのだろう。青年は言葉を続けた。
「だけど、君は今まで見てきた人間とは違う。だから君がいい」
「ちょっと声かけただけじゃねぇか。それだけで何がわかるってんだよ」
アキラは苛つきを隠しもせず、怒気を含んだ語調で凄(すご)むように言った。たいていの人間は少し凄んでやれば、怯(ひる)んで逃げるか自棄(やけ)になって襲いかかる。
目の前の青年はどちらの反応をするだろうか。怯んで逃げるのなら楽に済むし、自棄になって強引な手段に出ようものなら返り討ちにしてやろうと思う。
だが、アキラの意に反して青年はどちらの反応も見せなかった。それどころか、今までの柔らかな微笑みではなく、挑発的な笑みを浮かべた。
「不思議だね。君はどうして、まだここにいるんだ?」
「は?」
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