33人が本棚に入れています
本棚に追加
「君は僕を不審に思っているはずだ。わけのわからない奴だと。なのにどうして僕の手を振り払わないのかな。そうして去っていけばいいのに、どうしてまだ僕の前にいるんだ?まさか出来ないなんてことはないだろう?たいして力は入れていないのだから」
言われてふと気づく。青年の言う通りだ。彼はただ軽く掴んでいるだけで、簡単に振り払える。それなのに何故か、粟立ったままの腕は硬直したように動かない。
そして、また気づく。アキラの腕を掴んでいる青年の手が、未だひやりと冷たい。
アキラの平熱は、高くもないが低くもない。いたって普通だ。だけど、これだけ触れているのだからアキラの体温で青年の手が温まっていてもおかしくはないはずだ。それなのに、彼の手がこれほど冷たいということは少し異常ではないだろうか。
「…あんた、なんでこんなに冷たいんだよ」
訝(いぶか)しげに眉根を寄せて問うが、青年は意味がわからなかったのだろう。わずかに首を傾けた。
だが、アキラがちらりと青年の手に視線をやると、アキラの言葉に納得がいったというように笑う。
最初のコメントを投稿しよう!