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「君が生きているからだよ。だから、君には僕が冷たく感じるんだろう」
その言葉はまるで、自分は生きていないと言っているかのようだ。漠然(ばくぜん)と、きっとそうなのだろうとアキラは思った。
「あんた、死んでるのか」
「そう、僕は死者だ。いわゆる幽霊だね」
だが、青年がはっきり幽霊だと言っても、アキラは自分に霊感などかけらも無いことを知っている。見たこともないものを信じてもいない。かといってその存在を否定しているわけでもない。
だから、この青年が俗に幽霊と呼ばれる存在であろうと、ああそうなのかと思うだけだ。
「悪いが俺にはあんたをどうすることもできない。助けを求めたいなら他を当たってくれ」
そう言って、動かない腕を無理矢理に動かして青年の腕を振り払った。
しかし。振り払うことに成功はしたが、今度は足が動かない。
「っ!なん…」
「少し、体の自由を奪わせてもらったよ。まだ話は終わっていないからね」
「だから、俺には何もできねぇって言ってんだろ」
「生者と死者は触れ合うことはできない。だけど、僕は君に触れることができた」
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