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ついと目を細め、口元を綻(ほころ)ばせた青年は、詠(うた)うように言葉を紡(つむ)ぐ。
「死者は魂だけの存在。死してなお、生者(せいじゃ)と深く関わることはできない。だが、まれにそれができる者がいる」
「そいつが俺だって言いたいのか」
「ああ、そうだ。察しが良くて助かるよ」
「俺は霊能者でもなけりゃ霊感なんてものも無い」
「そう思い込んでいるだけだ。今まではどうか知らないけど、君はこうして死者である僕と会話している」
そうは言っても、アキラには死者を相手にしているという実感は無い。
青年の体は透けているわけでもなく、触れられないわけでもない。彼の体が異常なほど冷たくても、アキラの目には生身の人間にしか見えないのだから。
ただなんとなく、本当に漠然と、彼は生者ではないのだろうと感じているだけで、信じてはいない。
むしろ、馬鹿げているとさえ思っているほどだ。
「僕が死者だと信じられないのも無理はない。だけど本当なんだ。調べてみればいい。12年前の新聞に僕の死が載っているはずだ」
「……名前は?」
「レイヴィ=ウォーカー」
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