出逢い

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    レイヴィ=ウォーカーと名乗った青年は、そのまますうっと、空気に溶けるように姿を消した。   しばらくじっと青年の居た場所を見つめていたアキラは、自由になったその足で、ふらりと緩慢(かんまん)な動作でその場から離れた。       数日後、街のメインストリートを歩いていたアキラは、青年を思い出して近くの図書館へ立ち寄った。   だが、司書に頼んで出してもらった12年前の新聞の膨大な量にげんなりとし、今すぐ踵(きびす)を返し帰ってしまおうかと思った。   けれど、すべて出してもらった手前、手もつけずに帰るのはさすがにまずいだろうと、なんとか思いとどまることができた。   調べるつもりが無かったからだが、名前だけでなく、せめて何月の新聞か聞いておくべきだったとアキラは後悔する。   しかし、後悔をしてももう遅い。意を決して1月1日の新聞を手にとってみる。     青年の死が新聞に掲載されているということは、殺されたか事故死かのどちらかだろう。   そう推測し、三面記事にレイヴィ=ウォーカーという名がないかざっと目を通して探す。
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