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『……いいですよ。私はいつでも』 “私は構わない”なんて……、自棄っぱちもいいところだ。 そもそも、“先生”と個人的な関係なんて築けるわけがない。 立場上、先生の方に差し支えがあるに決まってる。 だったら、やはりさっきのは冗談で…… 「もう、先生ってばぁ……」 悦びに満ちる笑い声が聴こえると、自分がまだ扉の前から動いていない事に気付く。 誰の前でもあんな風に、悦びそうな言葉をちらつかせていて、決して私だけが特別に誘われたわけではなくて…… 大体さっきの話は、正式に成立してもいない。 あの女の子から妬まれるような謂れなんて、これっぽちもないのに。 あんなに睨まなくても…… 少し会話をするだけで、周囲に要らぬ敵を作らせてしまうなんて、先生も罪作りな人だ。 背後の扉から廊下を挟み対面して見えるのは、アルミの枠に嵌められた薄い青の空。 そこに浮かぶ形のはっきりしない雲を一瞥して、その場を後にする。 知的で穏やかで、容姿には非の無い本田先生。 バツが付いているものの、そこがまた、大人の色気と深みを濃くしているような気がする。 大人の魅力を持て余す先生のモテ具合は、誰に教えられなくても容易く想像出来る。 そんな先生だからこそ、女性への対応も手馴れたものなのかもしれない。
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