8216人が本棚に入れています
本棚に追加
「はじめ、まして……」
微かな違和感に、少し声が詰まってしまった。
……この瞳、どこかで……
「こちらの美人さんが、マナの友達の明菜さん」
記憶を辿ろうとしたところで、私を紹介するショウくんの声に遮られ、慌てて笑顔を繕った。
「帰りはこいつに送らせますから」
本人の意思確認をせずに言い切るショウくんに向けて、右掌を広げて小さく左右に振る。
「あ、本当に大丈夫だよ……」
「いいのいいの。その為に呼んだんだから」
「でも……」
外していた視線を、呼び出された彼に向け直すと、
「俺は構わないですよ。こんな綺麗な人、一人で帰らせるわけにはいきませんから」
穏やかにふわりと微笑んだ黒の瞳に、もう一度だけ、微かな違和感が過ぎった。
「先輩にはいつもお世話になってるし、今日も奢りだって言うし。マナさんの末路を考えると、あきなさんが一人になるのは目に見えてます」
「悟流くんまでっ、酷いっ」
ショウくんの隣からマナが、意地悪く微笑む黒の瞳の彼に嘆いてみせる。
そんな光景を眺めながら、さりげなく私の名前を転がした柔らかい声に、耳触り好く鼓膜が揺らされたのを感じていた。
.
最初のコメントを投稿しよう!