Call My Name

２

どんな気持ちで私がタツキに想いを告げたのかとか、

タツキを立てようとする私が、どれだけ彼を想っていたのかとか、

そういう事の全てを、タツキは全然分かってくれていないだとか……

甦った懐かしい想い出を涙に濡らしてしまう事もなく、流石にそれは理不尽だろうっていうマナの言い分のお陰で、笑いに変える事が出来た。

「お待たせしましたーっ」

周囲の騒音を縫ってきた店員さんの声に、グラスを揺らしていた手が止まる。

そこから外さなかった視界の端に、透き通った茶色い液体の満ちたグラスが、ス、と入り込んできた。

続けて私が持つグラスの口辺りを掴んだ、綺麗な指の持ち主を辿ると、

「それ、下げますね」

という柔らかな声で、少し首を傾げた黒の瞳が私を見ていた。

「……」

回ったアルコールの所為で、彼の意図がさっぱり掴めなかった私の手から、そっとグラスが抜き取られる。

「もう飲めないでしょう？　それで少し冷ましてください」

見つめた先の黒の瞳が、私の手元へと落とされると、同じ場所に私の目線も付いて行った。

「烏龍茶」

と、その飲み物の名称を告げてくれる柔らかい声に、ふわりと耳が撫でられ、余りの心地好さに自然と瞼の力が抜けた。