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ク、と頭の重みが重力に負けた瞬間、はっと覚醒が促される。
その衝撃で、油断していた瞼に力を入れると、グラスになみなみと満ちている烏龍茶を再び認識した。
ぼーっとする頭で、その液体の上層部に薄っすらと出来たグラデーションをじっと見つめる。
「大丈夫ですか?」
いつの間にか遠退いていた周りの騒音が、段々と近くなってきたところで、それをBGMにした柔らかい声が間近に聴こえた。
その声に合わせた微かな振動を耳元に感じると、耳に触れている温かさが上下する律動に、また瞼が下りる。
……ふわふわする……
ゆったりとしたリズムに身を任せていると、再びそこから直接鼓膜を揺らす振動が届く。
「帰りましょうか。終電なくなりますよ」
終、電……
意味を考えるだけで急き立てられる言葉に、今度こそ思考がはっきりと覚醒する。
「え、今……何時……」
「23時ちょっと過ぎたとこです」
23時……
確かに、急がないと最終に間に合わなくなる。
でも……
「……あれ……? だってまだ……」
長居しているつもりはなかったのに、随分長い間マナと話していた事に驚いた覚えがあるから、その時確認した時刻はまだ22時を回っていなかった筈……
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