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「大丈夫ですか? 立てます?」
「あ、うん……大丈夫みたい。ありがと……」
触れられている箇所がほんのり熱くなっている感じがするのは、……多分、私がタツキ以外の男の人に触れることに、余り免疫がないからだ。
私は、彼以外の男性と交流を持つことなんてほとんどなかった。
話をするのだけでも抵抗があったし、遊びに行くなんて以ての外。
初めての彼氏だったっていうこともあったんだろうけど、他の男性と必要以上の関わりを持つのはいけないことだと、切に思っていたのだ。
それなのに……
健気に尽くした私が馬鹿だったのかな……
ふっと無意識に、軽い嘲笑を漏らしてしまった。
自分で“健気”だなんて……、悲劇のヒロインのつもりなんて全然ないのに。
密かに自分を嘲りながら、ゆらりと立ち上がる。
物思いに耽る思考によって、ただでさえ酔わされている三半規管がさらに邪魔されると、唐突に軽い眩暈が襲う。
『大丈夫』だと言った身体がふらりと揺らぐと、優しく支えてくれていたさとるくんを背にして、その胸元へと再び倒れ込んだ。
「お、っと、……大丈夫ですか?」
「……」
二の腕の熱い掌の感覚と、再び香る優しい匂いに安心感を覚え、思わず触れた胸元に頭をすり寄せてしまった。
今までの私からしたら、ありえない行動。
私、何やってるんだろう、……自棄にもほどがある。
さとるくんに、迷惑、掛けてるのに……
だけど……
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