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暗闇でも比較的存在感のあるフロントストラップの白いパンプスは、裏地のレース柄と足の甲に作られた小さなギャザーが気に入っていた。 ぎくりと怖気づかされた言葉を、どうでもいい思考で受け流そうとした私の視界の中に、細身のパンツに見合ったシンプルなスニーカーが爪先を向けてくると、 「……まだ、好きなんじゃないですか?」 頭の真上から穏やかな声が、脈絡のない質問を浴びせてきた。 「……え……?」 ……なぜ…… 唐突な疑問に顔を上げると、腰を引き寄せる手はそのままに、身体を私に向き合わせてくる彼の瞳は、その綺麗な色で私を覗き込んできた。 黒の瞳が小さな光を込め、そこから私の心を射抜くような強さが降り注いでくる。 「さっきの、彼氏ですか?」 「……」 「追ってたでしょう、必死で」 ……必死? 「知ってる人なんだなとは思ったけど、その瞳は……“ただの知り合い”を見る目じゃない」 「……」 ……だったら、何だと言うのか。 彼氏だった人だからって、それがどうしたんだろう。 「そんなに好きなら、どうしてあっさり別れたりしたんですか」 「……」 さとるくんは、突然何を言い出すんだろうか。 「どうして別れたくないって言わなかったんです?」 「……私、は……そんな……」 「未練なんてないように振舞ってるけど、……そうじゃないですよね」
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