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  眩し過ぎる明かりに焦点の合わない目では、開かれた液晶の文字は見えない。 ……電話……? メールであれば途中で振動を止め、確認をすればいいのだろうけど、止められる様子がないところを見ると、それが電話の着信だということがわかる。 間もなく、彼に止めて貰えなかった振動が独りでに動きを諦めると、明かりは閉ざされ元の場所へと仕舞われてしまった。 出なくてよかったのかな…… 無意味に世話を焼きながら当の彼を見上げようとすると、前方から運転手さんが声を掛けてきた。 「南町まで来ましたけど、どの辺りですか?」 隣を見上げようとした視線を、朧に自分の映る黒いガラスの向こう側へと向きを変え、わずかな手掛かりを頼りに現在地を確かめる。 余り期待の出来なかった判断能力で、なんとか目的地までの道程を伝えると、頑張って働きくらくらと疲れを見せる頭を座席の背凭れに預けた。 軽く息を吐き少しだけ瞼を休めると、私に寄り添う掌の温かさを思い出し、その持ち主である彼を横目でちらりと盗み見た。 外よりも暗い車内ではっきり輪郭を掴めない横顔は、それでもすれ違う対向車のライトを間隔的に受けながら、その綺麗なラインを魅せてくる。 さっきの着信相手のことでも考えているんだろうか。 流れる外の景色を向いている黒の瞳は、しばらく私を見ていない。
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