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沈黙が耐え難かったわけじゃないけれど、タクシーに乗ってから一度も口を開いていない彼に、私は余計な世話を焼く。
「さっきの……電話、大丈夫だったの?」
「ん? ……ああ、いいよ……別に」
私には関係ないとでも言うような抑揚のない声と、ただ一瞥してきただけの瞳に、一瞬喉が、きゅ、と絞まった。
だけど、その冷めた口調とは裏腹に私に触れる温かな掌は、あと少しだけその密着度を増した。
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