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  背中にある腕の感覚が瞬間的にぐっと強くなると同時に、膝の裏から掬われる身体は、簡単に彼の腕の中に納まった。 視界に映る白い天井に張り付いた照明が、静かな足音と共に、逆光になる彼の向こう側へと遠退いていく。 「寝室どっちですか?」 玄関からの照明だけで確認出来るであろう廊下の奥の暗がりの中、二つの部屋の扉の選択を迫られた。 1LKの間取りの短い廊下の左手にあるスライドの扉は、キッチンからリビングへと繋がっている部屋だ。 「つ、突き当たり……」 「わかりました」 咄嗟に、鍵の付いた部屋を寝室にしていた方の選択肢を答える。 「あ、あの……」 「ん?」 密着したさとるくんの胸元から、声を発すると同時に微かな振動が頬に伝わる。 その近さをはっきりと認識し、自分の状況を踏まえると、どくん、という心臓の動揺を境に、激しい羞恥が私を襲う。 次第に脈が速度を上げ、明らかにアルコールの効果を上回る血流が、自覚できるほどに顔を真っ赤に染めていく。 どきどきと逸る鼓動と、さとるくんとの距離感に、息をするのも躊躇われる。 かちゃ、と寝室の扉が押し開かれると、真っ暗な部屋に玄関の照明から届く光が、極僅かにベッドの輪郭を浮かび上がらせた。
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