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  少しだけ沈黙を挟み、先生は躊躇うように口を開く。 「しばらく……」 「……」 「元気、なかったよね」 見つめ続けている横顔は、私を捉えるために一瞬だけこちらを向く。 瞬間的に、びく、と肩を揺らすと、綺麗な瞳の視線は、またすぐに前方へと向き直った。 「どうしたんだろう、って思ってた」 「……」 「……いや、深くを追求するつもりはないんだけど……」 返答しなった私を気遣い、一層穏やかな声を出した先生に……とく、とささやかに胸が反応する。 先生、も、……私が口にしていない心に気づいてくれていた…… ……でも、深くには、来てくれない。 「ちょうど夏休み前くらい。おれのところに来たときも、今みたいな瞳、してたから……気になり出したら止まらなくなって……気づいたら声かけてた」 正面を見据える瞳は私を映してはいないはずなのに、それでも、穏やかな声で語られる言葉は、しっかりと私に向けられている。 「……彼、と……」 気づいた深層に、触れては来ない先生に、 「……別れたんです」 自ら、心の内を曝け出そうと思ったのは…… 「友達に、……気持ちが移っちゃったみたいで……」 真っ直ぐな言葉をくれる先生なら、やっぱり優しくて温かな掌を持っていて、……私を甘えさせてくれるんじゃないだろうかと、思ったからだ。
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