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その日以降、大学で顔を合わせることはもちろんあったけれども、用もないのに近づいたり、これと言って会話をすることはなかった。
食事をした翌日こそ、不意に絡んだ視線をお互い大袈裟に外したものの、その夜に掛かってきた電話で、
『あからさまだと周りにばれそう』だと、なるべく自然体で居るように努力しようと笑い合った。
連日、と言うわけではなかったのに、先生からの電話がない夜は、なんとなく物足りないなと思うようになった頃……
無事に、教員採用試験の最終合格通知が届いた。
それを、先生に報告すると、
『ただの口実だけど、……お祝いに御馳走させて』
と、電話の向こうから、穏やかに照れを含めた嬉しそうな声を聴かせてくれた。
マナにも合格の報告も兼ねて、先生とのことを話すために、夕食を共にしたある日。
試験合格よりも、先生に特別扱いされたことの方に満足した心をマナに肘で突付かれながら、帰路にある横断歩道に立ち並んでいた。
青信号に変わり足を進めていた横断歩道から、ふと視界に入ってきた、一台のセダン。
街の明かりと、落とされた前照灯のお陰で、少し離れた停止線に停まる車内の様子が朧気に目に付いた。
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