25/25
前へ
/673ページ
次へ
  助手席に座った髪の長い女性に向かい微笑む運転席の……男性。 街の明かりがあるとは言え、はっきりとは判断がつかなかったその姿。 通りすがりながら見ただけだったから、違ったかもしれない。 なのに…… どくん、と緊急回避を促してきた心臓によって、反射的に視線を逸らしてしまった。 ……見てはいけない…… と、耳の奥でけたたましい警鐘が鳴り響いた。 あの優しさも、笑顔も……全部本物だったんだ。 ……似てる人なんて、世の中にはたくさん居る。 はっきりと確認したわけではないと、自分に言い聞かせながら家路に着いたのは、 先生との二度目の食事を翌日に控えた、月の出ていない夜のことだった。 .
/673ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8218人が本棚に入れています
本棚に追加