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「あんまり変わらないのかなぁ。顔、隠してるつもりだったんだけど」
「か、隠してるんですか? なんで……」
「おれ、自分でも吃驚するくらい視力いいんだよ。だから、あれは伊達」
改めて素顔の先生にちらりと目線を向ける。
「この顔、素で晒してたらやたら人が寄ってくるみたいで……特に女の子。あんまりそういうの得意じゃなくて。だから隠してる。
見惚れるでしょ、この顔」
に、と悪戯に笑う先生の瞳が私を見返し、その瞳に煽られるように胸が鳴ると、お酒は飲んでいないのに、頬が、か、と熱くなった。
たしかに、先生が自分で言うほどの顔の端正さには納得させられる。
でも……
女の子、苦手なんだ……
ふと思い出したのは、先生に甘えた声を出すあの学生の姿。
……じゃあ……私、は……?
熱くなる頬に同調して、心臓が、きゅ、と掴まれる。
喉の奥から、じわりと湧き上がる熱に……呼吸がし辛くなった。
視線を外せない綺麗な瞳に見据えられている所為で、身体は硬直して動かない、のに……お箸を持つ手は震えている気がする。
「あー、なんか……」
硬直する私に気づいていないのか、先生はさらりと独り言のように言葉を零す……
「やっぱり……
すきだな、君のこと」
「……」
……あまりにも、唐突に。
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