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フルが食事を終えて数十分が経った。さすがに放置しておくのもまずいと寝室に戻ったのだが。
「いや、だから主人はかっこいい人間だろう」
「いえ、その理屈はおかしいです。むしろ可愛いお方です」
「貴様は何を言ってるんだ……」
「あら、貴女こそ」
確かに口論していた。確かにしていたんだ。だが先程のような刺々しい感じはせず、むしろ楽しそうに見える。
「いいか?真面目でクールな主人が良くてだな」
「いえ、ですからね?普段クールな方が見せるドジなところが可愛くてですね」
「おい」
「む?ああ、主人か。主人よ聞いてくれ。こいつが主人の事を可愛いと」
「ハンターさん聞いてくださいよ。この人ったらかっこいいって言い出すんですよ?むしろハンターさんは可愛いんです」
一体こいつらは何を言っているのだろうか。何故俺の口論に変わっ……いや、最初から俺の事ではあったが。でも何かおかしくないか?
「……喧嘩してたんじゃないのか?」
「確かに最初はそうだったが……。いつの間にか主人の話に変わってな」
「依頼から帰ってきて、たまに転けたりするのが可愛いって言ってたらこの人が反論しまして……」
「んで、もう終わった?」
「いえ、まだです」
「私もだ。こいつには色々と教えてやらないとな……」
「……好きにしてくれ」
一気に気が抜けた。暇そうにしているフルを連れて帰ることにしよう。ここに居ても仕方がない。
寝室を後にしようと歩き出すと、後ろから受付嬢が駆け寄ってきた。
「今日は諦めますけど……。私は貴女の事を想い続けますからね」
耳元でぼそりと呟かれ少しドキッとしたが構わず歩き出す。
「ふふっ、耳真っ赤ですよ?」
「おい、貴様主人に何を言った?」
「秘密です。そんなことより話の続きをしましょうか」
俺は二人の声を背に、家へ向け歩き出す。もう少しまともな話題はなかったのだろうか。当人を前に話されると恥ずかしくて死ぬ。
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