第1章

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 私はスイスで行われる国際ジュニア大会に参加出来ることになり、わざわざスイスまで足を運んだ。      チェスは現在、世界的にはロシアが一番強い。    強さを表すランキングであるレイティングの上位はほぼロシアが占めている。    ジュニアにも同じことが言えるようで、ジュニアの強い子もロシアが多い。      その中で抜きん出ているのが、両親共にチェスのプロであり、天才児と誉れ高いサラブレット、アレクサンドル・アレニチェフだった。    その辺のプロよりも強いと噂で、私の参加する国際ジュニア大会では優勝確実とまで言われている優勝候補だ。      私は関係者から噂を聞き、アレク……・彼の名前は言いにくかったのでこう呼んでいるが、アレクに対し、すごく興味を持っていた。    初めてアレクを見た時は、遠くからだったけれど、あまりのキレイな容姿にとてもビックリしたことを今でも覚えている。      絹のような美しく長い銀の髪を後ろでベルベットのリボンで1つに結び。    碧眼の瞳。    白磁の肌。      男ばかりの兄弟に囲まれ、人形で遊ぶ事のなかった私にさえ触れてみたいと思わせるほど、美しいアレクに興味をそそられたのだ。      大人に囲まれるアレクに何とか近づこうとしたが、大会の前夜祭で相手はチェス界でも有名なサラブレット。    そう簡単には近づく事は出来なかった。      そんな時、偶然の奇跡が起こったのだ。  
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