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現場の空気は濁っていて、栗の花の臭いがする。
臭いの正体は…精液だ。
中学生の頃に嗅いだ、ゴミ箱にたまったテッシュから発せられる臭いと、この場所の臭いは同じだ。
静寂に包まれたクラブの地下室…ここで、薬を楽しんだりS㊦Xしたりして遊んでいたのだろう。
しかし、こうなるまでやる必要があったのだろうか?
目の前には、ミイラ化した死体が2つ。
男と女…しかし、とにかく普通じゃない…異常な光景だ。
男と女は繋がった状態で死んでいる。
女性器からは精液が溢れだしたようなあとが残っている…そうとう射精したのだろう。
それだけでも異常だが…男の首には噛まれたような傷痕がある。
女の首にも外傷があるが…これは、噛みちぎられたようだ。
両方の死体の口元に乾いた血がこびりついていることから、男の傷は女が噛みつき、女の傷は男が噛みちぎった…ように見える。
まぁ、俺の場合は推理してもだいたい外れるから…必要があれば、またアイツに任せよう。
じっと死体を見つめている俺に、同僚の烏野(うの)が眉間にシワをよせて声をかけてきた。
「日村、これもやはり…」
「異常すぎる。また、あのDNAが採取されるのだろうな」
烏野はゴクリと唾を飲み込んだ後に言った。
「斎藤 梅男のDNA…か」
俺は無言で頷き、鑑識にDNA鑑定の結果を急がせるよう指示を出す。
まぁ、待たなくても…十中八九、異常性欲者の仕業だ。
しかも、単なる異常性欲者ではなく…超能力を持った現実離れした連中。
俺たちの使命は、そんな異常性欲者を根絶やしにする事…その為なら、どんな事でもする覚悟だ。
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