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寛人は店を出ると、アパートと逆方向へ歩きだし電車に乗った。
僕にとって、今…何よりも優先すべきことはあの人に会うこと。
もう、どうしてとか何でとか考えるのもやめたし考えてもわからない事はわかっている。
答えは、会ってからわかるのかも知れない。
思いつきでやってきた歓楽街…ここなら、女装が趣味の人も沢山いる。
あの人の手がかりを掴めるかも…そう思いたがら、客引きをしているオカマさんに話しかけてみた。
「レンジ?聞いたことないわね…それより、あなた…私と会うの初めてかしら?」
オカマさんは奇妙な事を聞き返してきた。
「はい、ここに来たのは初めてです。知らないなら、結構です。失礼しました」
その後、何人かのオカマさんたちに聞いてみたが…誰もあの人の事は知らなかった。
それより、何か…僕を見る目がおかしい。
なんなんだ?
オカマの知り合いなんていないぞ…なんで、みんな僕をあんな目で見るんだ!?
疑念に満ちた目…首を傾げる素振り。
何だか、息苦しい…ここには来るべきではなかったのだろうか?。
今、何時だろう…ふと時間が気になって携帯を取りだそうとして、ようやく気がついた。
荷物を入れたバックが無い…店に忘れてきたようだ。
とりに行かなければ…そう思って走ろうとした瞬間、人にぶつかってしまった。
「す、すいません」
謝ると同時にぶつかった女性を見ると…見覚えのある顔だ。
コンビニで何度か見た事がある…確か、電話でイロハと名乗っていた。
「あら、あなた…コンビニの店員さんじゃない?ここは、あなたみたいな人が来るような場所じゃないわよ。お家に帰ってゲームでもしてなさい」
そう言うと、彼女は何事もなかったように僕の前から立ち去っていった。
彼女の言う通りだ…ここは、僕の来るべき場所じゃない。
息苦しさが増していく…早く家に帰りたいが、その前に荷物を取りにいかなくちゃ…あの中には、大切な物が入っているんだ。
携帯と…あとは…
!?
まてよ…あの女、ゲームと言わなかったか?
何で僕がゲーム好きな事を知ってるんだ!?
考えている最中、僕の視界に女性が映った。
あの女性は…バイオリンケースであの人を殴った女性だ!
今度は、間違いない!!
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