04…正方形の狂気

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「ってぇ!!」 声と共に男はソラから手を離す。 「ソラ、逃げて!!」 「ダメよ、寛人も一緒に!」 「いいから、ここは僕に任せて、助けを呼んで来て!!」 足止めしなければ、すぐに捕まる。 僕の目を見たソラは、小さく頷き走り出す。 「クソガキ…てめぇには手を出すなって言われてたが…もう、容赦しねぇぞ?」 僕に手を出すなって…誰から言われたんだ? 腕にナイフを刺したまま、男の拳が僕の腹を突く。 僕はその一撃でダウンした。 情けないなぁ…やっぱり、ゲームみたいにはいかないや。 でも、少しだけ…誇らしい気分だ。 こいつらが何者で、誰に指示されたかのか…疑問を残したまま、僕は目を閉じる。 すると、現実より美しいゲームの世界の草原が広がり…僕は意識を失った。 「なんだこいつ、一発でのびちまったぜ?」 ナイフで刺された男が、倒れた寛人の顔に唾をはきつけ…その顔面を蹴ろうと足をあげる。 一番奥にいるリーダー格の男が、それを止めた。 「顔には絶対に傷をつけるなって言われただろ?金が貰えなくなるぞ」 舌打ちをして、足を下ろすと金的された男がようやく立ち上がった。 「それより、さっきの女だ!顔面ぐちゃぐちゃにして犯しまくらなきゃ、気がおさまらねぇ!」 リーダー格の男は、ため息を吐き言う。 「お前らがどうするかは勝手だが、まずは先に金を貰いに行くぞ」 「そうしたら、あの女を見失うだろが!」 「安心しろ」 そう言いながら、男は帽子を少し上げた。 この男の正体はソラの友人、津田である。 「あの女は、知り合いだ。住んでるところも知ってるから後で教えてやる」 津田に言われ、2人はしぶしぶと動きだす。 「…おい、移動する前にナイフを抜け。俺の車に血がつくだろ」 「…あぁ、大した痛みじゃないから忘れてたぜ。ドラッグが効きすぎてんだろな」 津田に言われ、男はナイフを抜こうとする…が、抜けない。 「なんだ?ナイフが…抜けねぇ!」 「バカか?どれ、ちょっと手を離せ」 「それが…どういうわけか、今度は手も離れねぇんだよ!」 男は恐怖心から大きな声をあげる。 すると、倒れていた寛人が急に立ち上がった。 その口元は微かに緩み…微笑を浮かべている。 「チッ…起きちまったじゃねぇか。仕方ない、もう一度寝かしつけてやるか」 津田は面倒くさそうに寛人に近づき…腹に蹴りを入れた。
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