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津田が寛人に蹴りを入れた瞬間、寛人はその足を掴み靴を撫でた。
何のつもりだ?
意味不明な行動に対し、津田は力任せに寛人の手を振りほどこうと力を入れるが…寛人はすぐに津田の脚から手を離す。
津田と寛人の目が合う。
寛人の目が、さっきとは違うように感じていた。
すでに仁保からの指示はクリアしているのだから長居する必要はないと考えた津田は立ち去ろうとする。
「い、いだぁぁぁ!?」
しかし、仲間の悲鳴を聞き振り返った。
ナイフが抜けないと喚いていた男が…何を思ったか腕を前後に動かし自分で自分の腕を切ろうとしている!
「お、お前…何してる!?」
それは、異常な行動だった。
ナイフを握りしめたまま、男は叫ぶ。
「自分でも、訳がわからねぇんだよ!このままじゃ、腕を切断しちまうぅ!止めてくれ、俺の腕を止めてくれぇ!」
もう1人が男の腕を止めようと掴むが、止まらない!
ぼと…と、音をたて男の肘から下が地面に落ちた。
「あぁぁぁぁ…俺の腕がぁぁぁぁ…」
「薬がキマリすぎてんのか!?イカれてやがる!」
止めようとした男が、冷や汗を浮かべて言う。
「わかんねぇ…自分でも、何でこんなことしてんのかわかんねぇんだ!血が止まらねぇ…助けて…イテェよぉ!!救急車呼んでくれよ!!」
津田は嫌な予感と共に立ち尽くしている寛人を見る。
相変わらず不気味な笑みを浮かべ、血の中に落ちた腕を見つめていた。
(こいつ、何かがおかしい!あり得ない事だが…こいつがナイフに何かしたんじゃないか?仁保もどこか人間離れした独特な雰囲気を醸し出しているが…こいつも似たような雰囲気を纏っている。これ以上、ここにいるのは危険だ!)
津田はすぐさま仲間たちに指示を出す。
「おい、行くぞ!俺の車で病院に連れて行ってやる」
津田は寛人を無視して仲間を連れて車へ向かう。
寛人は、そんな三人の姿を見て軽く手を振り呟いた。
「さようなら…雑魚モンスターさんたち」
仁保から借りた高級車は乗り心地が良かった。
しかし、今はそれを楽しめる気分ではない。
何がどうなっているかは知らないが金を貰ったら金輪際、仁保と関わらない方が良い。
そんな事を考えながら、津田は車を走らせた。
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