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寛人たちが立ち去った後、男性警官は水溜まりの中からナイフを拾い上げた。
水溜まりはドロドロした粘性の液体で、ナイフは糸を引いている。
その場に残っていた2人の婦人警官のうちの1人が、それを見て注意をした。
「ちょっと、大切な証拠を手袋もつけないで触るなんて…だいたい、あなたどこの派出所から…」
男性警官は眉をしかめ、素早く2人の肌に触れた。
「うるさい奴だな…溶けちまいな」
一瞬で男性警官を注意した婦人警官が液化し、ドロドロした液体と着ていた服が地面に落ちる。
もう1人が悲鳴をあげようと口を開く。
しかし、声が出ない。
代わりに、口の中からドロドロした液体が流れ出た。
「声は出ないぞ…舌と声帯の一部を液化したからな。相棒みたいになりたくなかったら、抵抗せずについてこい」
恐怖に脅えながら、婦人警官は涙を浮かべ言われるがままになった。
この男性警官の正体は、レンジを閉じ込めた異常性欲者である。
「能力を連続で使ったから、かなりビンビンだぜ。お前の肉体…たっぷり楽しませてもらうからな」
異常性欲者が婦人警官を連れ去った頃…寛人はソラと相談していた。
「今日は解散よ!それに、何だかここは危険だし…それに、もしかしたらレンジはアパートに戻ってるかも知れないし!それにしても、こんな時に繋がらないなんて日村も使えないわね!」
ソラは日村刑事と連絡がつかず、通りかかった婦人警官に助けを求めて戻ってきた。
これがきっかけで、ソラは僕を信用してくれた。
そして僕もソラは信頼できる人間だと思った。
もし、僕が同じ立場だったら…自分だけ逃げていたかも知れない。
「ちゃんと寛人にも連絡するから、連絡先教えて」
そういえば、荷物を店に忘れてきたから携帯がないんだった。
「ごめん、携帯を忘れてきたんだ…番号教えるよ」
番号を教え駅に到着した後、その場で解散。
できればこのまま家に帰りたい。
理由は妙に体が熱いからだが…バイト先に荷物をとりにいかなくてはならない。
怖い目にあって興奮し発熱したのだろうか…そんな事を考えながら先を急ぐ。
バイト先に戻り、カウンターにいるスタッフに訳を話す。
「あぁ、でも…今、社員さんとバイトの女の子が休憩中なんだよ」
「そうですか」
だからどうした?
そう思いながら店の奥へ向かう。
ドアの前に立ったところで、さっきのスタッフが微妙に困り顔だった理由がわかった。
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