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薄暗い通路を歩く1人の男が何重にもロックされたドアの錠を1つずつ外していく。
そんな作業を面倒くさそうにしているのは…検死官の的場である。
しかし、検死官「的場」は本当の姿ではない。
彼は、ある組織の一員であり1エリアを管理する立場にあった。
しかし、今は…自分以上に力を持つ人物に従って行動している。
プライドの高い彼にとって、そんな日々は苦痛としか言い様がなかった。
ようやく鍵を外し、ドアを開ける。
薄暗い部屋の中には、巻き髪に長いつけまつげをした女…風俗嬢のイロハとタバコをふかしながらモニターを見ている仁保がいた。
部屋に入っても、2人は何も言わない。
クソ、いちいち勘にさわる連中だ。
そう思いながら、的場は重い口を開く。
「指示通り…私の息がかかった異常性欲者を使って『リセッター』を監禁し、邪魔な連中を排除するよう伝えました」
リセッターとはレンジのことである。
レンジの持つ能力…それは、異常性欲者が持つ能力を消去する能力。
しかし、それは神が悪魔と戦う為に与えた力ではなく…悪魔が悪魔の為に与えた力。
全ては組織が必要な情報を得る為に仕込んだ事柄。
これは、何も知らない国民をもモルモットにした国家の人体実験なのである。
「的場…それで、結果は?私が指示した通りに仕事をしたのだろうな?」
「すいません、今は確認できません」
的場は確認する事を拒んだ訳ではない。
確認できないから、できないと伝えたのだ。
仁保は舌打ちをし、椅子から立ち上がり的場のポケットから携帯を奪い取る。
「着信履歴からすると…平戸(ヒラト)って奴があんたの『女神』から生まれた異常性欲者ね?電話するわよ」
女神とは異常性欲者を生産する役割を持った女性で、女神と交わった男性は100%ではないが特殊なウイルスに感染しDNAに異変が起きる。
仁保は平戸が仕事をしっかりこなしたかを確認すべく電話した。
平戸はすぐに電話に出た。
「レッドさん…わかるだろ?能力使った後なんだから、お楽しみ中だって事くらい」
レッドとは、的場が一部の異常性欲者に名乗る際に使っている偽名。
的場は分かっていた。
今は、それどころじゃない。
平戸は人間を液化させ、ローションのような液状にする力を持っている。
それを体に塗りたくながら快楽を得るのが平戸特有の異常な性癖。
そして、平戸は今まさに先ほど脅して連れていった婦警とお楽しみ中なのだ。
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