告 白

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(…答えは…出てる) まだ迷いたがっているのは、のし掛かるような期待を裏切る事になってしまうから。 詭弁だ綺麗事だと謗られようと、無責任に全てを投げ出す事に、躊躇いがないと言えば嘘になる。 決して傾けてはいけなかった天秤が、音を立てて軋んだ。 「…父さん」 ギリギリまで自問自答を繰り返した奨悟は、アンコールの声に紛れて克彦を呼んだ。 「ん?…どうした」 高揚している気分に水を差されたらしい克彦は、訝しさの中に不機嫌さを混ぜて奨悟を見据えた。 「お話したい事があります。…こちらへ来て頂けますか?」 問いでありながら否定の言葉を拒絶するような声音に、克彦は無言で瞳を細める。 やはり、樹里と会って行く事は出来ない。 その前に、攻略しなければいけない壁が…克彦だ。 「…オーナー」 足を踏み出しかけた克彦を諌めるように、伊吹が小さくも固い声音で引き留める。 「ここに居ろ」 だが克彦は、伊吹を見ないまま命令し、返事を待たず奨悟と連れ立って会場を後にした。
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