第一章

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海に面したここ、水瀬市の中心は大規模な商業地帯であり、その周りに住宅街がある。今は梅雨も開け、もうそろそろ真夏の日差しが降り出す頃である。 そんな日が近そうな朝、中心地から東方向の住宅地の中にある「県立東高校」に通っている俺、須藤修は小さい頃からの友達、続に言う幼なじみの梶原薫と共に学校までの道のりを歩いている所だ。 「もうそろそろ夏休みだね~」 「その前にテストあるけどな…」 「大丈夫だよ。修君頭は良い方なんだから」 「おまえより下だけどな」  県立東高校は1クラス40人で1学年5クラスの全校生徒600人の高校で俺達は2年A組である。東高校は成績が高い順にABC…と分ける制度である。 つまり俺も薫も成績は学年の上の方であるとは言うまでもない。 「同じAだからって頭が良いとは限らないだろ?今まで30より上行ったこと無いし…」 「そりゃテスト勉強してないからだよ~修君が本気になれば私を越しちゃうって~♪」 ちなみに薫は学年1位であり、全国模試でももう少しで2桁なのである。 「越せるわけ無い。それ以前になんで東に来たんだ?おまえなら水高狙えたじゃん」 水高とは「県立水瀬高校」といい、県内トップの進学校で、全国模試をやればほぼ全員の順位が2桁という勉強に力を入れてる学校だ。 「ま、ま~ね。そ、それよりも修君夏休みなんか予定ある?また今年もその日暮しにする予定でしょ?」 「ぎく…」 「図星か~。駄目だよちゃんと計画立てないと…」 「だって長期休みなんて宿題以外やること無いじゃん」 実際宿題なんて休み終了1週間前にとりかかるタイプだが… 「趣味でも持ったら?」 「なんかやると金が無くなる。そうなると暮らしがきつくなるからやらない」 俺の家は俺一人だけが暮らしている。  母は元から体が弱く、俺の妹になるはずの子を産んでから3日で亡くなり、妹の方も母の後を追うように行ってしまったらしい。 父は俺が中3の夏の頃に電車の事故に巻き込まれ、帰らぬ人になった。
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