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―――わたしも行きたい
「一緒には無理だ。俺みたいな人間は繋がりを持ってはいけない」
―――どうして
「いつどこで死ぬか分からないからな」
―――そんなの、みんな同じ
「追うのは自由だ」
そんなキザなことを言う存在に惚れてしまったのはいつだろう。
答えを探して、想い出を掘り返していく。
彼に出会う前、とても暗く先が見えない場所に私はいた。
過去の記憶がない私はどうしてそこにいたのか分からない。
動くことも出来ない当時の私に、ただ一つだけ出来たのは音を感知することだった。
"アレ" "N-380" "成功作"
それが私の呼び方だった。
名前をつけたのも誰か知らないし、何人の人がそこにいたかも分からない。
長い眠りから覚まされた私が初めて見た世界は、赤黒く染まった何かの破片やコードが床へと飛散していた。
彼と私だけが生きている空間だった。
『自由に生きな』
初めて自分に向けられた言葉。
『あなたは、自由なの』
初めて誰かに返した言葉。
『決められた範囲では自由だ』
今ようやく理解できるそのときの彼の言葉。
『自由に生きてもいいなら、
わたしも行きたい』
どうしてああ言ったのかは分からない。
けれどそれを後悔をすることもなく彼を追いかける旅は続いてきた。
彼の名は蒼といった。
時には大蛇を、時には幾千人もの兵たちを相手にしたりした。
そうするうちに戦う術を覚え、自身の才能をたくさん開花させていった。
止まった時間は蒼によって動かされ始めた。
そこまで考えて、やはり答えが出そうにないのであきらめる。
鳥の鳴き声が聞こえ始め、早朝を告げる。
扉を開ける以前からすでに明るい日差しが中へと差し込んでいた。
私は蒼のため自らのためにと、この間狩った熊の毛皮や猪の肉を袋に詰め、街へと情報収集へ向かい始めた。
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