第二章

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私の友達のサキがお店に来たのは忙しさが少し落ち着いた14時位だった。 「あっ、マリモ~。なんか、ごめんね。」 店長はニッコリ笑いかけるとサキをカウンターに座らせて コーヒーを入れる。 「大変だそうですね。 なにか出来ることが…」 と店長が言いかけたのをやめ入口に目を向けた。 『ガランガラン』 乱暴に開けられた扉から一人の男が入ってくる。 「…ひろと。」 どうやらサキの元彼らしい。 いやな感じ…。 店長は私に彼を案内させてカウンター席に呼ぶ。 「サキ!たかが浮気でなんだよ。」 ひろとという男は座るなりサキに向かって怒鳴るように口を開いた。 「だって。ひろとが…」 サキが何かを言うのを遮るように男はまた口を出す。 ほんとヤな奴…。 「また付き合ってやるっていってんだよ!」 私の中でプチっと何かがキレる音がした。 「あんた、ばっかじゃないの。サキはあんたなんか嫌いなの。わかる?」 私が口を出すと男はみるみる顔を赤くして怒鳴る。 「あぁ。てめぇには関係ねぇだろうがぁ!」 殴る勢いで手を振り上げた男の動きが一瞬でとまった。 「お客様。暴力はいけませんね。」 店長が片手で彼の拳を止めている。 よっ!店長。 「それから、こちらの暴力もいけませんが」 と言って店長は男の拳を払い言葉を続けた。 「言葉も使い方を間違えれば暴力になるんですよ。」 サキは顔を隠し泣いているようだ。 「この野郎。」 男は椅子から立ち上がるとカウンターの裏にやってきて店長につかみかかる。 止めようとした私はそのあと何が起こったのかまるでわからなかった。 一瞬にして男は床に倒れていたのだ。
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