第三章

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「店長やっぱり風ですよ。」 私がそう言って振り向くと同時に店長は 「まりもくん、お客さまですよ。」 そこにはカウンターに座る守衛のおじいさんがいた。 「えっ…!あれ?」 私は言われるままに守衛のおじいさんにおしぼりを出した。 (えっ。だって…さっき入ってきたの?) 私の頭の中が混乱している間に店長はすぐにコーヒーを出した。 「夏も後半ってところですね。」 店長の話に守衛のおじいさんは笑顔を向けると 「いつも美味しいコーヒーをありがとう。」 守衛のおじいさんはコーヒーを一口飲むと語り始めた。 「あの花壇はね。死んだばあさんと一緒にこの街がキレイになるようにって植えたんだよ。」 通りをいつもキレイに飾ってくれるあの花壇。 このおじいさん達が作ったんだ。 私はおじいさんの話に耳を傾けた。 「私ももう歳でね。もう花壇に水をあげれなくなってしまったみたいだ。」 「お体悪いんですか?」 私が尋ねると少し寂しげに微笑んで 「まぁ、そういうことだね。」 その寂しげな笑顔を見ていると胸がしめつけられる思いがした。 「それでね、勝手な願いなんだが…あの花壇を見守ってはくれんかねぇ」 守衛のおじいさんは寂しげであっても真剣な眼差しを店長に向けた。 「…はい、いつもあの花壇に癒されてますからねぇ。私が…いえ、私とまりもくんで見守りましょう。」 私は店長が言い直してくれた事が嬉しくて大きな声で返事をした。 「はい。まかせてください。」 そんな私に守衛のおじいさんは優しい目を向けて店長に声をかける。 「いい子ですね。店長さん、大事にしてあげなさい。」 店長は私を見つめて笑顔で 「はい。」 と答えた。 その笑顔が嬉しくて私は涙がこぼれてうつむいてしまった。 「まりもくん…。」 店長が優しい声をかけてくれる。 「仲良くね。」 私が守衛のおじいさんの声に反応して顔をあげると… そこにおじいさんの姿はなく 飲み干されたコーヒーカップだけが残されていた。
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