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店長の穏やかな口調に導かれるように入口に目を向けるとちょうど一組のカップルが入ってくるところだった。
(なんでわかるんだろう?)
そんな疑問を残して私はお客を空いているテーブルに通した。
注文はいつもの如くコーヒーだ。
『この店のマスターがいれるコーヒーはうまい!』
と評判らしい。
まぁ店長に言わせると『わりとうまい』
と言い直されるだろうが。
お客のコーヒーを入れながら店長はそのお客の様子をじっくりと観察している。
「はい。もっていってください。」
私はシャレた手狭な店内のテーブルのすき間を縫いそのお客の前にコーヒーをおいた。
「だから。もう少し待ってくれよ。ウチの親父が残した借金があるうちは俺は結婚できない。」
男性客は少し言葉を荒げて女性の方に話をしている。
私は店長のいるカウンターに向かう背中越しに聞き耳をたてた。
「だから、一緒に還していこうって言ってるんじゃない。
…わたしもう待てない。」
ははーん。
どうやら結婚を迫る女性と待ってほしい男性らしい。
私はゆっくりと歩きながら戻る。
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