第一章

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カウンターに戻った私に店長が静かに注意をする。 「お客様の会話を盗み聞きしてはだめだよ。」 そんなことを涼しげな顔で言っておきながら自分は地獄耳でちゃ~んと聞いてるくせに。 「あっすみません。」 そのままカウンターに座ると『二人で』さっきのお客の観察がはじまる。 もちろん私に会話まではしっかりとは聞き取れず動きに合わせて一生懸命アテレコをした。 「だから言ってるだろ。あと少し待ってくれって。」 「私と一緒が嫌ならそう言えばいいじゃないっ。」 熱くなった二人の会話は悪い方向に進んでしまう。 やっぱり人間熱くなりすぎは良くないよね。 まぁ少しアテレコ入ってますけどね。 「ふぅ。女性の方が出ていってしまいますね。」 「もうしらないっ。」 店長の言ったように女性は席を立つと勢いよく店を出ていってしまった。 (ほんとだ。) 唖然とみつめていると店長が私をみつめ返して 「なにしてるんです? 止めてきなさい。」 店長の言葉の真意はつかめている。 私はすぐに彼女のあとを追って外に飛びだした。 「まったく。人使い荒いんだから。」 でもそんな店長を嫌いになるどころかむしろ好…いやいやそんなことないっ。 などと勝手な妄想をしていると少し前を歩く彼女の後ろ姿を発見した。
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