・始まりの春

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「―――ということで,昨日の入学式も無事終わり今日から高校生活がはじまりますね。」 春のぽかぽか陽気に包まれて眠たくなりそうな窓側の一番後ろの席。 もうすぐ一年に一度の私の大嫌いなことが始まろうとしている。 「それでは,話はこのくらいにして自己紹介しよう。名前と好きなものを言ってくれ。」 自己紹介…。 あがり症で緊張しいの私にとって毎年どれほどの勇気がいるだろう。 自分の番が回ってくるまでの緊張感,前で話すというお約束。 しかもこの席,前に行くまでにも注目を浴びるという………。 あー。先生,私の番だけ飛ばしてくれないかなぁ……。 「はい。じゃあ,次は佐藤。」 私のささやかな願いもむなしく不意に呼ばれて我にかえる。 どうしよう。 まわってきちゃった。 えっと,名前と好きなものだよね? 色々な話し声が聞こえる中,静かに前に向かう。 賑やかで楽しそうなクラスだなとは思うけど,どうにも初対面では話しづらい。
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