第二章

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 俯いた顔でそう言うセンリ。 「親が誰なのかも知らないし……私が何処で生まれたかも……なんで孤児院に居たのかも……全然、知らなくて……。だから、少しでもいいから自分のこと知りたいんです」  顔を上げるセンリ。そこには、俺に懇願するような眼差しを向けた少女の顔があった。 「孤児院の職員の人達には聞かなかったのか?」 「先生達は知らないって言って……何も……。だから私王宮に士官したんです。王国の中枢に行けば何かわかるんじゃないかって、そう思って」 「そう、か……」  うーん……困ったな。センリの両親のことは一先ず端に寄せといて、問題はセンリの正体をセンリ自身に伝えてもいいかどうかということだ。勿論正体がわかっている以上いつかは伝えるし、伝える前にばれるということも有り得るがそれは問題じゃない。  それなりの時間一緒にいれば俺のことも信用してくれるだろうから俺の話を信じてもらい易くなると思うのだが、いかんせんセンリとは今日初めて会ったのだ。初めて会った人に「お前は人間じゃない、存在しない存在だ」とか言われても普通は信じない。  少なくとも俺は絶対信じないし、逆に真っ向から否定する。別に信じてもらえないのは構わないんだけど、俺自身がするように真っ向から否定されたらたまったもんじゃない。  
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