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それから数日。
幸村はまだ戻ってこなかった。
美音は夜遅くまで起きていて、帰りを待つ。
寝る間を惜しみ、食事もあまり採らない。
「…美音様、そろそろお休みになられた方が…。」
「もう少しだけ…。」
今日も門の傍で幸村の帰りを待つ。
その健気な姿に鴉はそれ以上は何も言えなかった。
その代わりなのか…胸には怒りが込みあげてきた。
(美音様に…悲しい想いをさせるなど…。)
顔には出さず、只拳を握る。
主を想うからこその行動。
「……。」
(一言、探してこいと仰ってくれれば…。)
直ぐにでも駆けて、幸村を見つけ出すのに。
美音は、そう進言しても首を横に振る。
(―…幸村様を、心から信じて居られる…。)
解っていたことだったが、それでも。
(…美音様に笑っていてほしい…。)
その想いが強くなるほど、行動を起こしてしまいそうな自分がいる。
美音が幸村を想うように、鴉も美音を想っているから。
「…二人とも、そろそろ寝たら?」
「佐助さん…。」
二人を見かねたのか、佐助は優しく声をかけた。
「大丈夫。旦那はちゃんと帰ってくるって。」
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