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「!幸村っ…!」
美音が声を上げると幸村も気づいたらしく走って向かってくる。
「美音!!」
その表情は笑顔で、鴉は気づかぬうちに眉間に皺を寄せていた。
「幸村…怪我はない…?」
「無論!」
「そう…。」
(良かった…。)
安心したら力が抜けたのか。
幸村に寄りかかるように倒れた。
「…っ…美音…?」
「美音様!」
「…。」
「美音!!い…一体どうしたのだ!?しっかりしてくだされ!!」
身体を揺するが反応はない。
「旦那!!そんな暇あったら部屋に運ぶ!!鴉は布団を準備して!」
「承知。」
「う、うむ…!」
抱き上げると急いで美音の自室へと運ぶ。
布団に寝かせて様子を見る。
「美音…。」
幸村は枕元に座り、鴉は柱に寄りかかっていた。
暫く沈黙が続いていたが、唐突に鴉が口を開いた。
「…美音様は、幸村様を心配されておりました。寝る間を惜しんで帰りを待ち、心配の余り睡眠もろくにせず。」
普段話さない鴉が饒舌で、幸村は驚いたが大人しく話を聞いていた。
次第に罪悪感が芽生えてくる。
「貴方は…何がしたかったのですか。」
「そ、それは…。」
「美音様はどれほど心をお痛めになられたか…貴方には解らないでしょう。」
悲しい顔を浮かべ、笑顔も無理をして作ったものだった。
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