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それを見る度に、鴉は無力感に包まれた。
悔しい――…。
結局自分では、励ますことさえ出来ない。
「…鴉…。」
「…本来ならば、こうして看病させることも反対。しかし…。」
幸村が側にいる方が、美音も安心出来るだろう。
「美音様はお望みであろう。我は下がります。」
そう呟くと鴉は部屋を出た。
「や…旦那にお説教なんて、らしくないことするね。」
「佐助。」
「ちょっと話でもどう?お粥、旦那に渡して直ぐ来るから。」
断る間もなく、佐助は部屋に入っていった。
そして直ぐに出てくると、屋根に行こうか、と鴉を外に連れ出した。
「…話とは?」
「んー…まあ大体解ってるんじゃないの?」
二人の間を、風が通り過ぎる。
「真相、か?」
「御明察♪」
「やはり絡んでいたのだな。」
すっと目を細める。
微かに宿る怒りの色に、佐助は少し冷や汗をかいた。
「ま、まあまあ…兎に角俺様の話聞いてよ。」
「……。」
「実は武者修行に行く前に、旦那、落ち込んでたんだよね。」
「落ち込んでいた…?」
何故、と言葉に出さずに続きを催促する。
「美音ちゃんが、構ってくれない…鴉とばっかり一緒にいるってね。」
「……。」
鴉は呆れた表情を浮かべ、溜め息をついた。
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