32人が本棚に入れています
本棚に追加
ある日男が歩いていると、道端で偶然ばったり会った友人に「お、その人は彼女かい?」といわれる。
周りを見渡してもその友人以外に人はなく、男は「妙な冗談を言うな」と答えたが、友人は不思議そうな顔をして、「何が冗談なんだ?」と言う。
友人のおふざけに耐えられなくなった男は黙ってその場を去る。
しかし男はその後どの人に会っても、居るはずの無い彼女を連れ添っていることを指摘される。
ますます怪訝に思う男だが当の自分にはなにも見えはしない。そうこうしている内にいつの間にか、男は彼女と交際し、結婚したことにまでなってしまう。
自分にはなにも見えないのに、周りの人々には男は伴侶と幸せな生活をおくっている様に見えているのだ。
そんな不思議な生活がずっと続いた。
しかし男が70歳を迎えた時周りの人々は見えない伴侶の死を悲しみだすようになる。
彼は始めて見えない彼女を指摘された時の様にひどく困惑したが、訳も分からず涙を流してしまった。
そして男は何十年付き添ったという見えない伴侶の死を弔った。
最初のコメントを投稿しよう!