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「弟ー、おーい弟ー!」
ドンドン、と寮の扉を叩く姉、響子。
ちくしょうちくしょう! 一体どうなってやがる!? 俺は姉になったんじゃないのか!? なんでもう1人姉がいるんだ!?
じゃあなんだ、俺は、つまり……姉と入れ替わったとか、そんな漫画みたいな話じゃなく、ただ女になった……?
ってこれもどこの漫画だあああ!
しかもなんだよ、俺の女バージョンって姉そっくりなのか!? 普段気にしなかったけどめちゃくちゃ美人だよ、なんかもうちくしょう!
「いないの? ああ、そうか。もう『弟』はいないよね。おーい、『妹』ー!」
「てめぇ今すぐ入りやがれぃ!!」
バンッ! っと一瞬の動きで姉を玄関内に連れ込む。いやむしろ拉致する。それくらいのスピードだった。誰かが見てたら助けに来るくらいの光景だったろうな。
「痛いなぁ、ケイト。ワォ、お姉ちゃんそっくり!」
「目を輝かせて喜んでるんじゃねぇ! 一体どういう事だ? その口振りじゃあ、何か知ってんだろ!?」
くそっ、自分の声を聞くのもちょっと恥ずかしいぞ。なんかもう、すっげー女の子女の子した声だ。
しかし響子め。絶対何か知ってる。っていうか、何が妹だコノヤロー。
「うーん、っていうか妹欲しかったし」
「おい、んなこと聞いてねーよ! つか、欲しかったで俺が妹になれるか!」
「ところがどっこい!」
姉はずかずかと部屋の中に入ってくる。制服姿だ。純白の半袖シャツの上に深い青のブレザー。黒いスカートはなかなかに際どい長さ。さすが女子高生。
気になるのは姉が手にしている『ある物』だが……。
「神様がね、願いを聞いてくれたのよ」
「はぁ……?」
んな訳あるかよ。神様がそうほいほいと、しかも男を女に変えるような荒業をしてくれるかよ。
いやそもそも神様ってなんだ。そんな非現実的な事象が俺の身体的変化として起こるなんてありえないっつーの。
……じゃあなんなんだこの身体。
「ま、あんたは実家(うち)のことほとんどほったらかしだったからね。そういうの信じられないだろうけど」
「うちって、実家のことか?」
「そ」
俺の実家は神社だ。藤沢神社。中学まではそこに住んでたんだが、高校はちょっと遠くて寮生活だ。といっても、中学の時だって家の手伝いは姉任せで何もしなかった。悔しいけど響子の言う通りだ。
だからっといって、女体化(これ)はない。
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