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じゃあなんだ、神様は実在して、それが藤沢神社にいて、響子の願いを聞いたってのか?
それもあんまりだ!
「という訳で……」
「わかった。話は読めたぞ。俺は今日は学校を休む。『それ』だけは却下だ」
「却下ー」
「人でなしー!」
『それ』とはすなわち、響子が手に持つ衣類だ。響子が着る制服。それと全く同じ物。
それを着ろと?
ノーノーノーノー。答えはノーだ。常識的に考えてみてくれ。朝起きたら俺は女子に。姉が部屋に来る。神様の仕業だと言い、女子の制服を(元)弟に着せようとする。
どうだろう、常識的に考えて。
……結論。非常識極まりない。ありえない。
どうする俺。俺に残されたカードは何だ? 何を切ればいい? 制服を着ればいい? だからそれは却下だああ!
「だいたいなあ! この姿で学校行っても、俺だとわかる奴はいねぇよっ」
「心配ご無用。すでに職員一同受け入れ態勢万全よ」
「なんだこの非常識人の巣窟はあああ!」
「いいからさっさと服を着る! いつまでそんな格好でいるつもり?」
言われて初めて気がついたが、そういえば俺歯を磨いていた途中だった。っていうことは起きたばっかりで、いつもならTシャツとパンツ――――ぐぼぁっ!
これはいかん。犯罪臭がする。年頃の男(?)がいつまでも見ていたら発狂する光景だ。自分を見るな。心を静めろ、俺。まずは着替えだ。着替え着替え……
あれ? さっきここにあった俺の制服(男)はどうしたっけか?
「寮の洗濯機って大きいよね。洗い物溜めても平気だし」
「何今日の分まで洗ってやがる! つか、俺の衣類全部放り込みやがったな!?」
「全部じゃないわよ。ほら」
「くっ……!」
結局、そういうことなのか。
……さらばだ、俺の大和魂。
* * * *
スースー。そう、スースー。
はぁ、死にたい。
響子はどうかしてるぜ。弟に自分の予備の制服を着せる姉がどこにいる。俺もどうかしてるぜ。姉の制服を着る弟がどこにいる。足がスースーする。なんて心許ない! 女の子っていう生き物はこんな布切れで生活していて平気なのか!?
っていうかこの学校もどうかしてるぜ! 男が女になったんだぞ!? 非常時だよ! もっと騒げ! そして俺を助けろ! それも全国規模で、いや全世界規模で!
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