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「では失礼します」
ファイルをめくる指が一瞬震えたような気がした。功二は整理された事件内容からまず目を通す。
『尾久國市楓町における男子高校生殺人死体遺棄事件概要』
発見日――二〇〇九年六月二十九日午前十時頃。
発見者――現場の土地及び空き家を所有、管理している五十代男性。
被害者――都立未國商業高校商業科二年の男子生徒、大澤大和。後の調べで、同年四月下旬から行方不明になっていたことが発覚。
現場の凄惨な状況から複数による殺人死体遺棄事件と断定し捜査を開始する。
二〇〇九年六月。それは、皮肉にも圭恵が狂い出した年と同じ。つまり被害者――大澤大和は四年前の春までは自分と同じように生きていたのだ。
複雑な心境に陥りながらも、功二は資料のページを繰る。そこには現場の惨たらしい状況が写真と共に記されていた。
『遺体発見現場――東京都尾久國市楓町×××××の空き家。人は昭和五十七年以降住んでいない状況。被害者は屋内の居間と思われる部屋の、壁付近で発見された。手足はバラバラに切断、付近に無造作に遺棄されていた。』
「……酷すぎる……」
写真を見て、思わずそう呟かずにはいられない功二だった。そこには、手足が切断された被害者――大澤大和の凄惨な遺体が収められていたのだ。よく見ると、額や胸に釘がびっしりと打ち込まれている。
――正気の沙汰ではない。狂気。遺体の損壊規模から感じ取れる被害者への憎悪。一体彼が何をしたというのだろうか。
顔付きを険しい状態にしたまま、功二はページを進める。書かれているのは『被害者、大澤大和について』。
『大澤大和』
一九九二年四月十日生まれの満十七歳。都内――鳥越市在住。家族構成は弁護士の父、専業主婦の母、中学二年生の妹の四人。
死亡時は都立未國商業高校商業科二年。地域や家庭内、及び学校での被害者について以下に記す。
『家庭、地域』
被害者一家は地域でも有名な上流家庭であり、裕福で品があると評される一方、被害者自身の評判は悪く味噌っかす扱い(近隣住民の証言)→理由は?
いつも病んだような表情をしている
醸し出す雰囲気が暗く近寄りたくない
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