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握った手の中身に気を取られ過ぎて、今日もアイツの仕掛けた罠に気付けないまま。
あたしは神坂の熱いキスの感触に溺れていく。
あたし、ほんとバカ。
……でも。バカで良かった。
そんな風に。バカみたいに幸せを噛みしめながら、ゆっくりと瞳を閉じた。
瞼の裏に焼き付くテレビ塔の赤い照明が、何だか擽ったく感じて。
降り注がれる神坂のキスを受け止めながら、思わず笑みが零れてしまった。
「…オマエ。随分、余裕なんだな?」
不意に口唇を離して、神坂が吐息混じりで囁いた。
「…こ、神坂ほどじゃ、ない、よ…?」
半袖から出る腕にまとわりつく夜風が、少しずつ。
熱を帯びていく。
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