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天然のイルミネーションが、神坂の姿を照らしてる。
街の夜景も色濃く深まっていく。
神坂はゆっくりとあたしの身体を包み込んでいた腕を解いて、右手をそっと差し出した。
「……俺はオマエに何もしてやれない。」
「へ?……神坂?」
「この夜空の星を取ってやる事も、あのテレビ塔の電気を消す事も出来ねぇし。」
「……。」
「でも。……オマエが俺のそばに居てくれるんなら……。」
「一生、オマエの事、笑わせてやれるよ?」
「……手ぇ出して。」
胸がいっぱいで、何も答えられなくて。
黙ったまま、両手を広げて差し出した。
神坂はまたクスクスと楽しそうに笑って、あたしの手のひらの上で右手を開いた。
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