20XX.9.26

31/40
前へ
/723ページ
次へ
天然のイルミネーションが、神坂の姿を照らしてる。 街の夜景も色濃く深まっていく。 神坂はゆっくりとあたしの身体を包み込んでいた腕を解いて、右手をそっと差し出した。 「……俺はオマエに何もしてやれない。」 「へ?……神坂?」 「この夜空の星を取ってやる事も、あのテレビ塔の電気を消す事も出来ねぇし。」 「……。」 「でも。……オマエが俺のそばに居てくれるんなら……。」 「一生、オマエの事、笑わせてやれるよ?」 「……手ぇ出して。」 胸がいっぱいで、何も答えられなくて。 黙ったまま、両手を広げて差し出した。 神坂はまたクスクスと楽しそうに笑って、あたしの手のひらの上で右手を開いた。
/723ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8139人が本棚に入れています
本棚に追加