第1章

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ドアに視線を移すと、担任の笹井が立っていた。 「おう、矢島。まだ残ってたのか。ご苦労、ご苦労。」 俺にテキトーな労いをかけて、笹井…先生は本題に入った。 「武井、お前探したんだぞ。まったく…。まぁいい、とにかく数学科室まで早く来なさい。」 なんだ、真未に用事か。 なんとなく気落ちして、真未に目をやる。 …おかしい。 異常なほど怯えている。 さっきの目とは比べものにならないほど、拒絶しきっている。 「武井、早く来なさい」 笹井…が真未を仕切に急かす。 真未は手が震えているのか、ペンがうまく入らず何度も落しながら、筆箱に押し込んでいる。 これだけ怯えるということは、説教かなんかだろう…と俺は軽く考えた。 笹井はキレるとヤバいって有名だもんな…そんなことを思い出していたら、真未は準備が出来たようで荷物を持ち上げていた。 笹井の方に行く前に、俺にバイバイって言った真未は明らかに助けを求めていた。 「バイバイ。…また明日。」 そう返した。 俺にはこの時本当によくわかっていなかった。 ただ明日も会いたいとだけ思った。
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