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会話と言っても、芸能人に対する噂話といったような内容ではなく、身近な人物に対する誹謗中傷のようだ。
物言いが気に入らない。
人を馬鹿にしたような笑い方が気に入らない。
少々綺麗だからって鼻にかけて見下してくる。
仕事で偉そうにしやがって。
何アイツ、ムカつく。
調子のんなクソ。
また違う男と歩いてたらしいよ。
人の男取ったくせに。
――恨み、妬み、ひがみ。
……それは、見るに耐えない、女の醜さを凝縮したような内容だった。
自分のことが書かれているわけでもないのに、読んでいるこちらが胸糞悪くなってくる。
どうしてこんなものを見せるのか。二階堂の意図が、全く呑み込めない。
「”BI” ”Basic Instinct” またの名を――」
二階堂の口から紡がれる英単語に、ふと、顔を上げる。
頬杖をつき、こちらを窺ってくる彼の目は、凍えるほどに冷たい。
「――”氷の微笑”」
貼り付けたような笑顔とまるで全てを見透かさんとする視線に、俺は先ほどまでとは別の意味で寒気がした。
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