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居間に寝そべり、老婆はテレビを見ながらきび団子をつまんでいる。
『明るいニュースです。正直村の村田権兵衛さん(67)が飼い犬のポチに急かされ裏庭を掘ったところ、埋蔵金が発掘されました……』
「お~い。婆さん。そいじゃ芝刈りに行ってくるぞ~」
老爺は玄関先でワラジを結びながら振り返る。
老婆は振り返りもせずにテレビにかじりついたまま、手をヒラヒラさせて行ってこいの合図。
老爺が出かけてしばらくすると、つまんでいたきび団子が無くなり、老婆が立ち上がった。
「そろそろ洗濯でもするかね」
洗濯物を籠につめると、洗剤のア●ックを片手に老婆は川へと向かった。
川辺に座り洗濯をする老婆の川上から、どんぶらこどんぶらこと、とても大きな桃が流れてきた。
大きさからして、とても自然界に存在する桃だとは思えない。
「まさか……」
ピンときた老婆は洗濯物をほっぽり投げ、服が濡れるのもかまわずに川に飛び込むと桃を引き上げた。
脇目もふらず一目散に家に帰ると、台所から包丁を取り出そうとするが、焦って引っかかりなかなか取り出せない。
「なんじゃこんな時に!」
半ば無理やり包丁を引き抜くと、急いで桃のもとへと戻る。
「上手くすればワシもこれで大金持ちじゃわい!!」
老婆は息を切らしながら、期待を込めて包丁を桃へと差し込み二つに割った。
しかし老婆の期待とは裏腹に、中には可愛らしい子供が入っていた。
可愛らしい子供は老婆を見上げ、怯えたように言った。
「鬼……」
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